「マップ・オア・ダイレクション」
「マップ・オア・ダイレクション」
ジョン・スミス
1. INVISIBLE BOY
2. HANDS
3. AXE MOUNTAIN
4. A LONG WAY FOR A WOMAN
5. ANOTHER COUNTRY
6. THE FEAR, THE HORROR
7. OLIVER
8. WATCH HER DIE
9. SWORDS
10. DEATH AND THE LADY
PRODUCED BY JASON BOSHOFF
Jon Thome – Double Bass
Danny Norbury – Cello
Adam Sutherland – Fiddle
Neil Yates – Trumpet, Flugelhorn
Chris Lowrence – Trombone, Flugelhorn
John – Guitars, Banjo, Tenor Mandola, Drums, Percussion, Keys, Vocals
All songs written and arranged by John Smith
Except “Death and The Lady” trad. arr. John Smith
Recorded by Jason Boshoff
In the bamboo forest on Penny Collin’s land near Natchez, Mississippi
UCM Museum, Abita Springs, Mississippi
The Park Lane Guesthouse, Austin, Texas
The railway outside Smithville, Texas
Vermillion Bay, Louisiana
The Blue Moon Saloon, Lafayette, Louisiana
Cypremart Paint Baptist Mission and under the nearby bridge, Louisiana
Piety Street Studio, New Orleans, Louisiana
Elvevator Studio, Liverpool
Jason’s house ,London
Recorded between November and December 2008
商品番号:RUCD163
定価:本体価格¥2,400
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●ユニークなレコーディングのプロセス
元々のジョン自身の計画は、街から離れた泊り込みで使えるスタジオに良いエンジニアと2週間ほど篭もって、牧歌的なフォーク・レコードを作るつもりだったのだが・・・。
彼は新作のプロデューサーとして、ジェイスン・ボスホフを紹介してもらう。マドンナやベイスメント・ジャックスなどと仕事をしてきた人と言うと、場違いな印象を受けるだろうが、彼はダミアン・ライスのパートナーだったアイルランドの女性歌手リサ・ハニガンのソロ・デビュー・アルバム『シー・ソウ』のプロデュースを手がけた人なのである。リサのアルバムは田舎の納屋をスタジオにして録音した作品だったので、ジョンの希望にそった人選だった。
ところが、ジョンのデモを聞いたジェイスンは「(米国南部の)スワンプ地帯が聞こえないか? 列車が聞こえないか?」と意外なことを言い出す。「何を言っているんだい?」とわけがわからないジョンに、ジェイスンは米国の深南部を旅して、様々な場所で録音するアイデアを持ちかける。最初はその提案に抵抗したジョンだが、その2週間後に2人はテキサス州ダラスへ向かう機上にいたのである。
彼らは車を借りて、楽器とラップトップとマイク数本を積み込んで12日間の冒険の旅に出た。テキサス、ミシシッピ、ルイジアナと回り、狭い浴室や酒場、博物館といった室内から、森の中や橋の下、入り江といった様々な屋外の場所で録音を行った。耳をすませると、鳥や虫の音、風のそよぐ音、列車の通り過ぎる音、そして銃声までが背景に入っている。
米国の南部に行って録音するというジェイスンのアイデアは非凡なものだったと思う。本作を通して聴けばわかるように、ジョン・スミスの音楽性は様々な影響が有機的に絡み合っている。おもしろいのは、英国の伝統音楽とジョン・マーティンやニック・ドレイクの影響に、達者なバンジョウを弾いて歌う<ウォッチ・ハー・ダイ>に聴かれるようなオールドタイム/マウンテン音楽や<オリヴァー>でのライ・クーダーばりのスライド・ギターといった米国のフォーク音楽が自然に融合しているところだろう。これは大西洋をまたいだコラボが増えてきた近年の英米フォーク界全体の傾向と共振するもので、今の若い世代らしいものでもある。だから、英国フォークの神秘性と米国南部の空気感が出会った本作の独特の雰囲気はジョンの音楽の個性をさらに強めるものになっている。
本作の重要な主題となっているのは「死」だ。もちろん伝統歌には死がたくさん現れるので、フォーク音楽の世界ではめずらしいことではないのだが、ジョンにとっては非常に私的な題材でもある。彼は10代の終わりに髄膜炎を患って死にかけたのだ。非常に短期間で重い病状となり、深刻な生命の危険にさらされたそうで、その体験があまりに強烈だったゆえに、その後長らくそれを無視するようにしてきた。だが、この数年にそのことを改めて考えるようになってきて、かつての死を間近にした体験を基に、幽霊が主人公と思われる(目に見えない男は足が無いと言っている)冒頭曲<インヴィジブル・ボーイ>を書いたのだという。
まさに血まみれという表現がぴったりなのが<アックス・マウンテン>だ。「僕の隣にお座り。お話を聞かせよう。アックス・マウンテンという町とレスター・ジョセフ・ケイルの物語だ」という歌い出しで、伝統バラッドのように語られる物語は、夫と友人たちを殺した恐ろしい連続殺人鬼に、神様に祈って手に入れた斧で復讐する女性が主人公である。内容が内容だけにジョンもジェフ・バックリーばりの激唱を聞かせる。
そしてアルバムを締めくくる唯一の伝統歌<デス・アンド・ザ・レイディ>も、死神とその犠牲となる若い女性の間の会話という死をめぐるもの。途中からホーン・セクション(マイケル・マクゴールドリックの作品でおなじみのトランペット奏者ニール・イエーツら)が入り、終盤はバンドの伴奏になるという変化に富んだ劇的な編曲も素晴らしい。
その他の収録曲の多くは、さまよい歩いたり、どこかへ移住したり、旅をしたり、何かを探したり、といったことを歌っており、各地を回って録音した制作方法と響き合うものになっている。『マップ・オア・ダイレクション』、つまり「地図または道案内」という表題は本作にとてもふさわしいものだとよくわかる。
2010年4月
五十嵐正 Tadd IGARASHI(ライナーノーツより抜粋)
http://twitter.com/taddihno
「THE FOX AND THE MONK」
TRACK LISTING
MATCHBOX MAN
SO, SO
WINTER
SQUARES & CIRCLES
GREEN MAN
SOMETHING TERRIBLE
CORRIDORS
BONES
THE HOURS
JOHNNY WAS A SHOEMAKER
TO HAVE SO MANY
THE MAGICIAN
LIBRARY
RECORDING DATA
John Smith - Guitars, Vocals
Hugo Harrison - Double bass
David Junior - Percussion
Hannah Peel - Fiddle, Vocals, Whistle
Rachael Lander - Cello
Djamila Skoglund-Voss - Vocals on "Liberty"
Produced by John Smith, Luc bonnet
Written by John Smith.
(c)2006 John Smith
通信販売価格:2,200円(税込)